福田充男 (ふくだ・みつお)
プロフィール
北海道文教大学客員教授、園田学園女子大学つながりプロジェクト担当講師、名桜大学共同研究員。
関西学院大学大学院修了後、フルブライト奨学金を受けて渡米し、フラー大学院大学博士課程修了。
博士(Intercultural Studies)。
総務省「地域人材ネット」登録者(地域力創造アドバイザー)、内閣官房・内閣府地方創生専門人材(市町村長の補佐役)。中小企業庁起業家教育協力事業者。
地域づくりに関わる主な実績は以下の通りです。2011年の東日本大震災で津波被害を受けた気仙沼市の地域住民が取り組んだ福祉事業を支援し、10年間で、ゼロから段階的に六つの事業を創出していったところ、経常収支が1億円超に拡大し、20人の雇用が創出されました。2012年には、兵庫県伊丹市の「伊丹阪急駅東商店会」の会長に就任して中心市街地活性化を推進した結果、当時26店舗だった商店街加盟商店が50店舗以上に倍増しました。2013年に沖縄県の離島に所在する観光業者の経営ブレーンに就任しましたが、2016年にその中間支援組織が「第3回・ディスカバー農村漁村(むら)の宝」に選定されました。2013年に、NPO法人「教育政策ラボラトリ」を創立し、全国の約2千人の教員・保育士・保護者・学生等に実践的な子育ての仕方を指導しました。また、沖縄県の小学校で児童対応の仕組みづくりを支援したところ、暴力的な問題事案が半減し、職員のストレス値が30%低減しました。現在は、沖縄県名護市と教育アドバイザー委託契約を締結しています。
「JDINメソッド」開発者。日本コーチング教育振興協会理事。組織・人材開発・起業支援・自治体支援・コーチングのスペシャリスト。ジャパンビアソムリエ。著書・論文多数。
学術論文のご紹介
地域イノベーション急速普及の要因に関する研究
– 伊江島における民家体験泊イノベーションを事例として –
「計画行政」(42)2, 34-47, 2019
福田充男(株式会社Bonton)・瀬田史彦(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)
【抄録】 Everett M. Rogers のイノベーションの採用者カテゴリーの流れを援用して、地域イノベーションの各採用段階において、各主体が、相互に、また、他の団体と結びついて、どのように価値創造を実現していったのかを解明する普及構造モデルのプロトタイプを提示する。それを分析枠組みとして、沖縄県離島の伊江島における民家体験泊イノベーションを調査したところ、採用者カテゴリーの順にイノベーションが普及し、地域内の中核的組織が「稼げる仕組み」を獲得していった経緯を説明することができた。また、島内外における各イノベーション採用者たちが、経済的利得を求めただけではなく、都市圏の中高生の自立を助けるという社会的意義に共感・同意し、そのことがイノベーションの急速普及の要因の一つとなったことが判明した。よって経済性と同時に社会性を追求することが、地域イノベーションが広くかつ速やかに採用されるための要件の一つだと考えられる。
【キーワード】 地域イノベーションの急速普及, イノベーションの採用速度, 経済性と社会性の追求, 伊江島, 民家体験泊プログラム
宮古島所在の株式会社パラダイスプランにおける理念浸透
– 統合的経営理念浸透メカニズムの探究 –
「経営哲学」(18)1, 2-16, 2021
福田充男(兵庫大学)
【抄録】 本研究では、Peter M. Senge(2006)著「The Fifth Discipline」で提示されたディシプリンの1つであるシステム思考のうちの「問題のすり替わり構造」を主たる分析ツールとして援用し、沖縄県宮古島市所在の自然塩製造・販売業者の経営理念浸透メカニズムの解明を試みた。この事例の分析を通して、理念浸透を促進する「掲揚」と「実践」と「会話」という3つの行為が、相互に双方向に作用しあうという統合的学習モデルを、経営トップと経営チームと一般社員が共通して保有し、重層的なフラクタル構造を維持するときに、より深く組織に理念が浸透するという理念浸透メカニズムのモデルが導出された。
【キーワード】 沖縄県宮古市, パラダイスプラン, 経営理念浸透メカニズム, 掲揚・実践・会話の相互作用, 重層的フラクタル構造
地域創生の基本構造モデル
– 伊丹酒造家のソーシャル・キャピタル投資を事例として –
「日本地域創生学会会誌」(3), 2022
福田充男(北海道文教大学)
【抄録】 地域住民の共同が内発的に生成・発展していくプロセスモデルを、「関係(づくり)」「会話(=協議)」「実践(=共闘)」「(理念)掲揚」という四つの行動ステージに、Peter M. Sengeの五つのディシプリン(「チーム学習」「システム思考」「メンタルモデル」「自己マスタリー」「共有ビジョン」)を組み合わせて素描した。ただし、プロセスの起点である「関係」の成立はソーシャル・キャピタル投資から説明し、「実践」から「掲揚」への移行はKarl E. Weickの「センス・メーキング」を援用して説明を補った。この地域創生基本構造モデルを分析枠組みとして、江戸下り酒の銘醸地として名を馳せた摂津国河辺郡伊丹郷町(現在の兵庫県伊丹市の一部)の都市運営を析出したところ、町民の酒造家が領主の近衛家と構築した協働関係を土台として連帯し、贋酒流通という共通の危機に立ち向かい、経済性・社会性・所属性を包括する理念の掲揚に至ったプロセス展開を、「町民による主体的町政運営」の一つのモデルとして捉え返すことができた。
【キーワード】 地域創生基本構造モデル, 行動プロセスデザイン, 伊丹酒造家, 伊丹郷町, 住民主体の都市運営
農山村の経済発展プロセスに関する研究
– 鹿児島県鹿屋市柳谷地区を事例として –
「経営哲学」(20), 41-48, 2024
福田充男(北海道文教大学)
【抄録】本研究の目的は、補助金に頼らずに自主財源を築いて地域づくりを展開したことで知られる鹿児島県鹿屋市柳谷地区(以下、やねだん)における地域づくりの最初の10年間(1996-2006年)に実施された5つのイベントを、福田(2022)の地域づくりモデル(以下、「福田モデル」)を用いることで、住民起点で草の根的に推進された「農山村における経済発展のプロセス」について考察することである。やねだんの事例は、住民の当事者意識醸成を促す地域外からの関与がなくても、住民が地域づくりを我が事として受け止め、自律的に関係を築き、課題や危機を認識して会話し、対応策を実践するだけでなく、自前の地域づくり理念を形成して浸透させるという好循環を幾重にも展開することができるという可能性を示している。福田モデルは、地域内主体間の「(1)関係」深化による共同の発展、自由闊達な「(2)会話」によってもたらされる内省を基礎とした住民自身の改革案策定、住民の共闘という「(3)実践」をくぐり抜けることによる独自の物語の紡ぎ出し、次の危機対応の基礎となる「目指すべき理念」の新たな「(4)掲揚」、からなる四つの行動ステージの循環を素描する。そして、その四つの行動ステージを、Senge(2006)の五つのディシプリン(「チーム学習」「システム思考」「メンタルモデル」「自己マスタリー」「共有ビジョン」)が促進すると仮定している。やねだんの事例は、地域づくりプロセス循環の各段階に応じたディシプリンが機能したことで発展したと解釈することができる。
【キーワード】 農山村、経済発展プロセス、住民起点、やねだん、地域づくり、Senge、ディシプリン、行動ステージ循環